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エボラ出血熱の治療法と最新治療薬について

エボラ出血熱の治療法


エボラ出血熱には特効薬がないため、感染した患者のうち半分以上が死に至っているのが現状です。

したがって、現時点では、エボラ出血熱から回復した患者の体内できた抗体を活用し、元患者の血液や血清を投与することが、唯一の有効な治療法とされています。

エボラ出血熱を発病した患者に行う具体的な処置としては、脱水症状を抑えるための点滴、鎮痛剤やビタミン剤の投与などが挙げられます。

現在開発中の新薬の中に、エボラ出血熱の特効薬となる可能性がある薬剤が2つあり、今大きな注目を集めています。

その一つは、アメリカで開発された「ZMapp」で、2014年8月上旬に米国人患者に投与され、エボラ出血熱を完治させることができました。
しかし、「ZMapp」は、FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を受けていない動物実験段階の試薬だったため、現時点では、既に投与可能分は消費されてしまっています。

もう一つの薬剤は、富士フイルムホールディングス傘下の富士化学工業が開発した「ファビピラビル」という抗インフルエンザ薬で、数々の論文でエボラ出血熱に対する有効性が指摘されていますが、まだ臨床段階には至っていません。


エボラ出血熱治療薬の今後


WHO(世界保健機関)は、2014年9月5日開かれた専門家会議で、次のような具体的な指針を示しました。

  • エボラ出血熱から回復した元患者の血液や血清を用いた治療法を優先的に考慮すること
  • 臨床試験中のワクチンは、その安全性が確認され次第、感染国の医療従事者などに優先的に投与すること

ちなみに、ファビピラビルに関しては、有望な新薬であることは確かですが、現段階では試験管内での有効性が示されたに過ぎないため、投与の優先度を考えるに足りるデータが揃うのを待ってから検討に入るとのことです(WHOの専門家会議後に開かれた会見内容から)。

エボラ出血熱の症状(潜伏期間/初期症状/「炸裂・放血」など)

エボラ出血熱の潜伏期間


エボラウィルスは、体細胞の構成要素であるたんぱく質を分解して毒性を発揮するという特徴をもっています。
ウイルスに感染すると約2-21日間の潜伏期間を経て突発的に発症します。
血液を介して感染した場合は、発症が早くなります。潜伏期間中は感染力を持ちません。


エボラ出血熱の初期症状


エボラ出血熱の初期症状としては、発熱、悪寒、食欲不振、頭痛、筋肉痛、腰痛、発疹、腎障害、肝障害などが挙げられます。
これらの症状は、インフルエンザと似ていますが、エボラ出血熱の発症後4〜7日程度が経過し病状が進行すると、嘔吐や血便をともなう下痢が始まります。

その後さらに病状が進んだ場合は、約70%の患者に、吐血、歯肉、鼻腔、皮膚、消化管からの出血などの出血傾向や、かゆみを伴わない斑や発疹が出現します。

エボラウィルスは、体内の免疫反応を回避し、好中球(免疫細胞が警告を発してウィルスを攻撃する役割を持つ白血球の一種)の働きを阻害するという特徴を持っています。
したがって、エボラウィルスは、免疫細胞に感染することで、肝臓、腎臓、脳をはじめとする全身の臓器に広がることができるのです。

エボラ出血熱の発病後7〜10日が経過すると、体中の毛細血管に血栓ができる播種性血管内凝固症候群(DIC)による多臓器不全、出血によるショック症状、強い中毒症状などを引き起こし、エボラ出血熱患者の約半数が死亡します。


エボラ出血熱の出血


エボラ出血熱の末期症状としては、意識混濁、外出血、内出血などがあげられます。
中でも、患者の全身の開口部という開口部から、おびただしい量の血液と溶解した組織が噴出する「炸裂」や「放血」といった現象は、エボラ出血熱に特異な症状として広く知られています。
ただし、眼球などの全身からの出血が起こる事例は、患者全体の2割程度とされています。

患者がこの時期を持ちこたえることができれば、3週間程度の期間をかけて、エボラ出血熱の病状は回復に向かっていきます。
このように、エボラ出血熱患者が回復するかどうかには、患者自身の免疫力や健康状態、感染する際に接触した患者のウイルス数などが関係しています。

エボラウィルスが日本国内に流入する可能性とリスク

エボラウィルスの国内流入の可能性は?


エボラ出血熱の流行地域はアフリカに限定されており、患者に直接接触しなければ感染しないため、日本で流行する可能性は極めて低いと考えられています。

現在、日本国内の検疫所のホームページや空港などのポスターを通じて、流行地域への渡航や流行地域からの帰国に対する注意喚起が行われているだけでなく、外務省から、ギニア・シエラリオネ・リベリアの3国に関する感染症危険情報が告知されています。
また、国際協力機構(JICA)は、現地に派遣している日本人を国外に退避させています。

仮にエボラウィルスへの感染が疑われる人がいた場合は、国立感染症研究所で検査を行う体制も整えられています。
ちなみに、エボラ出血熱は一類感染症に指定されているため、エボラウィルス感染が明らかになれば、感染症指定医療機関で公費による適切な医療が受けられます。

日本などの先進諸国では、メディアが発達しており、国民はTVや新聞、インターネットなどでいつでも正しい情報を得ることができます。
従って、正確な情報を知ることにより、エボラウィルス感染のリスクを防ぎ、間違った思い込みや得体の知れない不安を避けることも可能になります。

例えば、エボラウィルスは潜伏期間中は感染能力はなく、空気感染もしないため、発病した患者と接触しない限り感染することはありません。

また、日本国内にはまだ感染者が確認されていないわけですから、日常生活の中で感染する心配は皆無です。


以上を総合すると、万が一、日本にウイルスが持ち込まれることがあったとしても、流行する可能性はほとんどないと考えられます。

現在、日本やアメリカの研究機関で、エボラ出血熱の治療薬やワクチンの研究開発が急ピッチで進められており、その成果に大きな期待が寄せられています。

エボラ出血熱の原因と予防策を知る(感染経路・「宿主」他)

エボラウィルスの自然宿主


エボラウィルスの自然宿主は、コウモリであると考えられています。
エボラ出血熱の最初の感染者であるされるギニア南部の2歳男児は、コウモリを食べたことで発病しました。
その後、この男児の家族にも感染し、葬儀に訪れた村人、看病にあたった医療関係者や親族へとエボラウィルス感染が拡大していきました。

ちなみに、カニクイザルからエボラウィルスに感染した例もありますが、カニクイザルはヒトと同様に終末宿主であると考えられています。

エボラウィルスの感染経路


エボラウィルスの感染経路についてですが、患者の唾液、血液、分泌物などによる飛まつ感染が主たる感染原因であるため、死亡したエボラ出血熱患者からも感染することになります。
基本的に、エボラウィルスの空気感染は無いと考えて差し支えありません。

エボラ出血熱の大規模な流行は、西アフリカ諸国での葬儀の際に死者に触れる習慣、葬儀のために遠方を訪れる習慣、越境して隣国の病院を訪れることなどによって引き起こされたと考えられています。

エボラウィルスの予防には、エタノールやアルコールによる消毒や石けんなどによる洗浄が有効であるとされているため、先進国で流行する可能性は低いとみられています。

例えばリベリアでは、感染を防ぐため、感染者、死者の家族、親族を隔離する政策がとられていますが、隔離されることを恐れる遺族が家族の遺体を路上に放置するという問題も発生しています。

また、シエラリオネでは、感染の疑いがあるものが外出しないよう兵士が監視し、「要注意区域」に指定されている地域では、医療用テントの出入り口を徹底的に除染するなど、メモ一枚も持ち出すことができない厳戒態勢がとられています。

現在、世界各国では、エボラ出血熱の流行国からのスポーツ選手の入国を禁止したり、流行国へのビザの発行を停止するなどの対策が徹底されています。

エボラ出血熱の歴史/発生地域/疾病としての危険度

エボラ出血熱とは


「エボラ出血熱」とは、ウイルスによる感染症の一つで、致死率がきわめて高いことで知られています。

エボラ出血熱は、WHO(世界保健機関)のリスクグループ4の病原体に指定されており、バイオセーフティーレベル(BSL、細菌やウイルスなどの病原体を取り扱う実験室や施設の格付け)は、最高度である[4]に格付けされています。
エボラウィルスは、世界保健機関非常に感染力が強いウイルスで、体内に数個入っただけでも感染します。

ちなみに、「エボラ」という名称は、発病した患者が住んでいた地域を流れる川の名前から採られました。
 
初めてエボラウィルスが発見されたのは1976年で、最初の患者は、スーダン人の男性でした。
それ以降、アフリカ大陸で突発的に10度にわたり発生・流行し、いずれの流行時も50〜90%という非常に高い致死率を記録しました。
現在では、エボラ出血熱患者の致死率は、人から人に感染するにつれ下がることがわかっています。

エボラ出血熱発症後、仮に死に至ることなく治癒した場合でも、高確率で失明、失聴、脳障害などの重篤な後遺症が残ります。

最初の患者が確認されてから2013年までにエボラ出血熱が発生した地域は、中央アフリカ一帯に限られていましたが、2014年2月からは、アフリカ西部のギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアなどで爆発的に流行し、現在も患者数が急速に増加しつつあります。

エボラウイルスの形状


エボラウィルスは、非常に小さいウイルスで、糸のような形状をしています。
ヒトの他にも、サル、豚、鳥類などに感染しますが、魚類や昆虫類への感染は確認されていません。
エボラウィルスの種類は現在までに5種類確認されており、種類によって病原性を示す生物が異なります。
ウイルスの種類によってはサルにしか感染せず、ヒトには無害なものもあることが知られています。

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